2020-01-01から1年間の記事一覧

合流型超幾何関数 その8 (漸近展開4)

最後に の場合.これは前回の とほぼ同じで,積分表示の(1)式を複素積分にし,図のような長方形の経路に沿って一周する. 結果は になる.これはNISTのDLMF 13.7.2式と同じである. まとめると になる.ストークス現象により偏角によって展開が異なる.

合流型超幾何関数 その7 (漸近展開3)

今度は の場合. 積分表示の(1)式を複素積分にし,図のような長方形の経路に沿って一周する. の大きさによらず長方形の内部で被積分関数は解析的なので,積分は0になる. 上で , 上で , 上で と変数変換する.例えば の積分は となる.これより となる.こ…

合流型超幾何関数 その6 (漸近展開2)

今回は の場合.前回の(2)式を再掲する. の場合, であるから,\eqref{1}の第1項は第2項に比べて無視できる.第2項の中で と変形すると( は上昇階乗べき), になる.

合流型超幾何関数 その5 (漸近展開1)

ここで行う漸近展開の方法は次の本による. J. B. Seaborn, "Hypergeometric Functions and Their Applications", Springer (1991). 前回の積分表示で引数を複素数に拡張した から出発する.積分区間を変更して変数変換すると になる.最後の等式で第1項を …

合流型超幾何関数 その4 (積分表示)

合流型超幾何関数はいくつかの表記がある.前回書いた はクンマー関数と言われるもので,他にオルバー関数 がある.DLMFによると, の関係がある.オルバーはDLMFの著者の一人,F.W.J. Olver であろう.さらにホイッテーカー関数 とは の関係がある. さて,…

合流型超幾何関数 その3 (微分方程式の解)

合流型超幾何微分方程式 の解として を仮定する. より\eqref{1}は となり,変形すると となる. の項が0になる条件(決定方程式)は である.漸化式は で与えられる. の場合,\eqref{2}は となる. は0や負の整数ではないとする. は上昇階乗べきである.…

合流型超幾何関数 その2 (微分方程式の特異点)

2階微分方程式 に存在する特異点 確定特異点: で の少なくとも一方が発散し,かつ がどちらも有限のとき, は確定特異点である. 真性(不確定)特異点: の少なくとも一方が で発散するとき, は真性(不確定)特異点である. 無限遠での特異性をみるには…

合流型超幾何関数 その1 (上昇階乗べき)

合流型超幾何関数の漸近展開を調べていたのだが,数学の本を見ると複素平面上に複雑な経路を取って積分している.厳密性を欠いても,もう少し簡単に導出する方法がないか探していたところ,何となく見つかったのでメモしておきたい.とりあえずは準備から. …

ブロッホの定理

量子力学のブロッホの定理をいまひとつ理解できていない。ポテンシャルが周期的で のとき,平行移動の演算子 はハミルトニアンと交換する. はユニタリーであるから固有値の絶対値は1であり,実数 を使って となるので となる.猪木-川合「量子力学I」ではこ…

レビンソンの定理

量子力学の散乱にレビンソンの定理というものがある.レビンソンの論文は N. Levinson, Kgl. Danske. Vid. Sels. Mat-fys 25 No.9 (1949) というもので,これがどういう学術誌なのかさっぱりわからなかったのだが,最近ようやくここに論文が公表されているこ…

部分波展開

部分波展開の公式についてのメモ レイリーの公式 証明 砂川重信,「散乱の量子論」岩波書店 (1977) P248 猪木慶治,川合光,「量子力学 II」講談社サイエンティフィク (1994) P443 球面波型関数の展開公式 証明 砂川重信,「散乱の量子論」岩波書店 (1977) P…

断熱近似とベリー位相

量子力学の断熱近似とベリー位相をウェブで検索してみると,多くが J. J.サクライ「現代の量子力学(下)第2版」と同じ説明である.ただこの本がオリジナルというわけではなく, Griffiths (2005) の取扱いにならった,と書いてある. Griffiths (2005) とは…

量子力学の定常摂動論(その2)

レイリー-シュレーディンガーの摂動展開 を具体的に計算してみる. としておくと,1次では 2次では となる.ここで の項は高次項なので落としている.これらの状態は規格化されていない. この調子で計算を続けていくと, の項は5個, の項は12個ある.一般…

量子力学の定常摂動論(その1)

量子力学の,時間によらない摂動論は演算子のままで計算すると比較的楽に展開できる。 非摂動部分のシュレーディンガー方程式を とし, はわかっているとする.また縮退はまったくないとする.摂動項が加わった場合を とする. で になる.直交条件として を…

ラゲール多項式(その2)

ラゲール多項式のどの定義を使うべきか迷うところだが,個人的にはNISTのDLMFによる定義を使うのが無難だと思っている.DLMFではラゲール(陪)多項式の定義はその1の(2)式と(4)式である.また前回,J. J. サクライの量子力学 第2版では(1)式や(3)式が使われ…

ラゲール多項式(その1)

ラゲール多項式は水素原子波動関数にでてくる(正確にはラゲール陪多項式).それ以外に使いみちがあるかと言われるとあまり思いつかないが,調和振動子でも球座標で解けば必要になりそうである.ラゲール多項式の定義は本によって異なる.例えば J. J. サク…

ロドリゲスの回転公式(パウリ行列による説明)

パウリ行列は行列といいながら,3成分ベクトルで表される. 何が行列かというと,ベクトルの各成分が行列である. ベクトルの成分が行列というのは奇異な感じがするが,python ではリストの要素にリストや辞書を取れることを考えれば不思議なことではない.…

ロドリゲスの回転公式(クォータニオンによる説明 その2)

前回使った と はクォータニオン(四元数,しげんすう)を使うとひとまとめに扱うことができる.クォータニオンは3種類の「虚数」 を使って定義される. 「」 はクォータニオンを表す記号とする.このとき となる.これはその1の(3)式と同じ表式である. ク…

ロドリゲスの回転公式(クォータニオンによる説明 その1)

2つの単位ベクトル のなす角を とする.次の2つの量を定義する. これから を満たす. は のように表される. 次に,単位ベクトル の関係として であるとする.まず であることに注意すると である.さらに を使うと である.これから となる.よって と の…

ロドリゲスの回転公式(回転行列による説明 その2)

前回でてきた指数関数 を展開する. この中の を計算するため,座標を数字で表し として などと表すことにする.このとき の行列成分を と書くと であり, となる.一つの項に2個の同じ添え字があったらその添え字について1から3まで和を取ることにする.す…

ロドリゲスの回転公式(回転行列による説明 その1)

「空間の回転行列」で示したように,x, y, z軸まわりの回転を表す回転行列を としておく.これらを使って回転軸 のまわりの回転を表すには,一度微小回転にしてからx,y,z軸のまわりの回転を合わせる.微小回転は回転の順序に関係なく回転行列をかけること…

ロドリゲスの回転公式(幾何学的な説明)

[参考] 1. 金沢工業大学 KIT 物理ナビゲーション 「ロドリゲスの回転公式」2. H. Goldstein, C. Poole, J. Safko, 矢野忠(訳), 江沢康生(訳), 渕崎員弘(訳) 「古典力学 (上)」 原著第3版, 吉岡書店 (2006) P213 ベクトル を, を単位ベクトルとする回転軸の…

能動的回転と受動的回転

ベクトル を成分と基底に分け(和の規約を使って) としたとき,能動的回転は成分 の変換,受動的回転は基底 の変換である. 受動的回転の回転行列 は を満たす.\eqref{1}に代入すると すなわち は と変換する( は転置を表す).回転行列 は直交行列なので…

オイラー角(能動的回転)

能動的回転,すなわち座標系を固定して物体を回転させる場合を考える. 1. 物体を 軸のまわりに角度 回転させる.これにより物体に固定された 軸は 軸に移る.2. 物体を 軸のまわりに角度 回転させる.これにより物体に固定された 軸は 軸に移る.3. 物体を …

コンドン-ショートレー位相

以前の量子力学の本では,球面調和関数の定義は次のように書かれていた。 最近の本では次のような定義になっているものが増えてきている. いずれも の場合である.両者の違いはコンドン-ショートレー位相と呼ばれる の有無である.実は,最近の定義はこの位…

オイラー角(受動的回転)

前回は各座標軸を回転軸とする回転を考えたが,今回は空間内の任意の回転を表すオイラー角を扱う.まず受動的回転,すなわち物体を固定して座標系(座標軸)を回転させる場合を考える. 1. 座標系を 軸のまわりに角度 回転させる.これにより 軸は 軸に移る…

空間の回転行列

空間xyz座標での,各軸のまわりの回転は平面の回転の簡単な拡張である.回転前のベクトルの座標を ,回転後のベクトルの座標を とする. z軸のまわりの回転ではz軸方向には変化しないので, である.座標軸を固定してベクトルを動かす,能動的回転の回転行列…

平面の回転行列 2

座標軸を固定してベクトルを角度 回転させるときの回転行列 は,複素平面を使うと簡単に導ける. 図のように点P を原点のまわりに角度 回転させ,点P' になったとする.点Pの位置を複素平面を使って と表し,点P'の位置を と表す.すると となるので である…

平面の回転行列 1

近頃まとまった時間が取れず一冊の本をじっくり読むことができない。なので、気がついたことをちまちま書いていきたい。 (平面の)回転行列を使うときに のどちらを使うべきか混乱することがある.これらは の関係なので,回転方向の違いだけなのだが,どち…

計測における誤差解析入門(その42) 12-16, 12-17

John R. Taylor「計測における誤差解析入門」の読書メモ 12.16 (a) より, であり, 以上は となる.これから, となり,制約条件は40人の1つであるから,自由度は である.よって となる. P295の表から,このときの確率は約2%であり,5%水準でポアソン分布…