2022-08-01から1ヶ月間の記事一覧

誰が磁場をつくったのか?(その3)

グリフィスのテキストでは伝導電流も変位電流も磁場をつくるような書き方だが,太田浩一氏の「電磁気学の基礎I」では変位電流は磁場をつくらないことを強調している.微分型のマクスウェル方程式を見るかぎり,磁場をつくるのは電流密度だけである.積分型の…

誰が磁場をつくったのか?(その2)

ストークスの定理(回転定理)によれば,閉曲線を囲む面は平面である必要はなく,どのような曲面であってもよい.前回は平面としたが,今度は図のような円筒を考える.平面を変形したものなので,円筒左端の面は「閉じて」おり,円筒右側の面は(図では見え…

誰が磁場をつくったのか?(その1)

グリフィスの電磁気学の本に面白い問題があった.元ネタは D.J. グリフィス(著),溝田節生・坂田英明・二国徹郎・徳永英司(訳)「グリフィス 電磁気学 I」,丸善出版(2019) の問題7.35である. アンペール・マクスウェルの法則 によれば,電流 があれば…

単極誘導

単極誘導(ファラデーディスク)は深入りすると泥沼にはまる危険がある.詳しくはファラデーのパラドックスを参照.問題設定はいくつかあるが,ここでは 砂川重信,「電磁気学」物理テキストシリーズ,岩波書店(1987) に掲載されているものを挙げる. 磁石…

誰が仕事をしたのか

摩擦のない斜面に物体を置き,図のように水平方向に力 を加える.すると物体は斜面に沿って上昇する.物体を上方向に持ち上げたのは誰だろうか? 一見すると力 は水平方向であるから鉛直方向に仕事をしない.斜面は摩擦がないので垂直抗力 は斜面に垂直であ…

アブラハム-ミンコフスキー論争(メモ)

アブラハム-ミンコフスキー論争とは,物質中の電磁場の運動量をどのように定義すべきかという論争.100年以上にわたって明確な結論は出ていない.以下のメモは David J. Griffiths, "Resource Letter EM-1: Electromagnetic Momentum", Am. J. Phys. 80, 7 (…