ストークスの定理(回転定理)によれば,閉曲線を囲む面は平面である必要はなく,どのような曲面であってもよい.前回は平面としたが,今度は図のような円筒を考える.
平面を変形したものなので,円筒左端の面は「閉じて」おり,円筒右側の面は(図では見えないが)もちろん「開いて」いる.この円筒を通り抜ける電流を考える.円筒左端の面には導線を通じて伝導電流 が通過する.またこの円筒は左側の極板と重なっているので,極板上の電流も円筒側面を通過する.(極板上の電流は中心からふちに向かって放射状に流れる.)これですべてである.すなわち,伝導電流は存在するが変位電流は存在しない.これは「その1」のときと逆の状況である.
極板上で極板の中心を中心とする,半径 のリング部分を外側に向かって通過する電流を とする.半径 の円部分の面電荷密度は,導線から流入する電荷と,リングから出ていく電荷の差で表されるので,
と書ける.ここで面電荷密度が一様であるとしていたから, でなければならない( は定数). は, であることを使うと に決まる.すなわち である.よって,アンペール・マクスウェルの法則より
を得る.これは「その1」と同じ答である.
「その1」では変位電流によって生じた磁場を,「その2」では伝導電流によって生じた磁場を計算し,いずれも同じ磁場を得た.アンペールループを囲む面は人間が自由に選ぶことができるので,「誰が」磁場をつくったのかは人間が恣意的に選ぶことができる.つまり「誰が」という問いは本質的な意味をもたないのかもしれない.グリフィスは準哲学的な問題,と書いている.