カラテオドリの原理と熱力学

 熱力学において,熱は状態量ではなく状態の経路に依存する.数学では熱はパフ形式(1形式)で表される.パフ形式は積分因子が存在すれば全微分の形にすることができ,全微分の形になれば状態の経路に依存しない,状態量が定義できる.熱力学では積分因子が絶対温度(の逆数),全微分で表したときの状態量がエントロピーである.


 2変数のパフ形式は常に積分因子が存在する.例えば圧力  P と体積  V だけが関係する熱力学系では常に絶対温度が定義できて,エントロピーが存在する. 一方,3変数以上のパフ形式では,積分因子はある条件を満たさないと存在しない.カラテオドリの定理によると,


「任意の熱平衡状態の近傍には、断熱変化では到達不可能な状態が存在する」

「パフ形式としての熱は積分因子をもつ」


は等価である.そこで前者の条件を原理として要請すれば,任意の変数をもつ熱力学系に対しても熱が積分因子をもち,したがってエントロピーが定義できることになる.これがいわゆるカラテオドリの原理であり,カラテオドリの原理は熱力学第二法則の等価な表現であることが知られている.とすると,2変数の熱力学系では熱力学第二法則を要請しなくてもエントロピーの存在が保証されることになるのだろうか?