2021-01-01から1年間の記事一覧

直交曲線座標の公式メモ

直交曲線座標を とする. 位置ベクトル に対して 円柱座標 : 球座標 : 直交曲線座標(右手系)の定義により 体積要素 勾配 発散 回転 ラプラシアン 変形速度テンソル ベクトルラプラシアン

面電荷密度と面電流密度

面電荷密度と面電流密度は表面上に分布する電荷密度,電流密度である.例えば 平面上に面電荷密度 の電荷が一様に分布し,他に電荷がない場合,(体積)電荷密度 は と書ける.デルタ関数が長さのマイナス1乗の次元をもつので両辺の次元は合っている. 次に …

点電荷と中性導体の間の力

グリフィス「電磁気学I」P115にこんな問題がある. 「点電荷とその近くにある帯電していない導体の間に働く力は常に引力となるか?」 たとえば導体にプラスの点電荷を近づけると,導体中のマイナス電荷が点電荷側に移動し,プラス電荷が反対側に移動するので…

棒磁石の磁化の発散

前回の話は,磁場 と の違いを説明するときにも使える.棒エレクトレット(棒電石)の代わりに棒磁石を考えればよい.円柱状で,軸方向に一様な磁化をもち,自由に動ける電荷が存在しない棒磁石を考える.磁化 しか存在しないので の回転は0になる. これか…

棒エレクトレットの分極の回転

電場 と電束密度(電気変位) の違いを説明するときに棒エレクトレット(棒電石)がしばしば登場する.棒エレクトレットは棒磁石の「電気版」である.理想的な棒エレクトレットは円柱状の物質で,軸方向に一様な分極をもつ.自由に動ける電荷が存在しない場…

ビットコイン・スタンダード

S・アモウズ (著),J・モーリス(企画),練木照子(訳),「ビットコイン・スタンダード」ミネルヴァ書房 (2021) タイトルは金本位制を意味するゴールド・スタンダードになぞらえたものと思われる. アマゾン書評では高評価が並んでいるが,個人的には期待…

グリフィス「電磁気学」邦訳

グリフィスの電磁気学の日本語訳を(ようやく)買った.原書を先に買った身としては,こんな平易な英語も読めないのかと思われそうだが,正直に言って日本語では読める速度がまったく違う(もちろん理解の深さも).改めて読み返してみると,やはり優れた教…

力のモーメントとトルク

力のモーメントとトルクは意味が異なるのだろうか?Wikipediaには,固定された回転軸のまわりの力のモーメントをトルクと呼ぶ,と書いてある.この定義だとトルクは力のモーメントの一部ということになる.しかし英語の本にある torque は力のモーメントと同…

電気双極子にはたらく力

電場中で電気双極子にはたらく力は で与えらえる. は双極子モーメントである.これは電磁気学の本に書かれていることであるが,この式を最初に見たときは混乱した.右辺は微分演算子がついているので位置の関数であることがわかる.しかし左辺は磁気モーメ…

楕円体の導体の表面電荷分布

楕円体の導体に電荷が与えられているとき,表面につくられる電荷分布は解析的に計算できる.グリフィスの電磁気学では導出は与えられず,結果だけが載っている.P111(原書)の脚注をみると導出は別の本にあり,"tour de force" (離れ技)が必要らしい.し…

光の屈折と反射のときの振動数

光が屈折や反射をしても振動数は変わらない.これは高校物理では理由なく書かれていることらしい.そのせいかネットにはなぜ振動数が変わらないのか?という質問を見かける.誰が考えても当たり前のことであればこういう質問は出てこないと思うので,やはり…

1kgの物体を持ち上げるには

1kgの物体を持ち上げるためには,最低何kgの力(正確には kg重 だが,ここでは慣例にしたがって kg で書く)が必要か?というタイプの問題を物理ではよく目にする.模範解答は 1kg であるが,物理を学んだことがない人の中には「1kgじゃ持ち上がらないよ」と…

角運動量の「辞典」

量子力学の入門書を現在と以前とで比較してみると,いくつかの違いがあることに気づく.その一つが角運動量の扱い方で,以前のほうがずっと詳しく書かれていた.これはおそらく量子力学の応用として原子物理や原子核物理を見据えていたためであろう.現在で…

数学に魅せられて,科学を見失う

ザビーネ・ホッセンフェルダー「数学に魅せられて,科学を見失う -物理学と「美しさ」の罠-」みすず書房,2021すでにいくつもの書評が見られるので,気になった点だけメモしておく.これは素粒子物理に関する本で,スイスの大型加速器LHCでいまだに標準模型…

メタバースはSNSの「次にくるもの」になるか?

メタバースはマルチバース(多宇宙)と似た言葉だが,もちろん物理の用語ではなく,「あつまれ どうぶつの森」をイメージするとよいかもしれない.メタバースはロールプレイングゲーム(RPG)の土台として使われる,コンピュータ上の仮想空間のことであるが,R…

mostly plus と mostly minus

相対論の共変形式において,ミンコフスキー計量の対角部を とするものを "mostly plus" とか "East coast convention" とか他にもWikipediaによると色々呼ばれている.逆に とするものを "mostly minus" とか "West coast convention" などという.East coas…

グラスマン数の複素共役

2種類のグラスマン数 と の積の複素共役は となり, と の順番が入れ替わっているにもかかわらず,負号がつかない.これは一見すると奇妙で,例えば と が実グラスマン数の場合, となり,「実」であるにもかかわらず複素共役が元の値と一致しない.「公式」…

熱力学と統計力学

折に触れて熱力学と統計力学の初歩を学びなおすことがあるのだが,どちらも本当に学びづらい.統計力学については,高橋康「統計力学入門」(講談社サイエンティフィク,1984) のまえがきに,「統計力学という学問を解説するにあたって,基礎をほじくりだす…

岩波講座 物理の世界

10年くらい前まで「岩波講座 物理の世界」という,各100ページくらいの薄い本が刊行されていた。全85冊の予定だったようだが,たぶん10冊以上は未刊のままである.いつのまにか岩波書店のサイトにもこの講座のページがなくなってしまった.手元に刊行予定だ…

ERC20 トークンを試す(その2)

今度はERC20のもう一つのプリセット,ERC20PresetMinterPauser.json を試してみる. > tkn = await ERC20PresetMinterPauser.new("My Token", "MTK") これは名前の通り,トークンの追加と送金停止が可能である.トークンの供給量を増やすことをミント(鋳造…

ERC20 トークンを試す(その1)

イーサリアムのトークン標準規格であるERC20に準拠したトークンを試作する.今回はLinuxを使う. まずnode.jsをインストールする.バージョンは以下のとおり. $ sudo apt-get install nodejs, npm $ nodejs -v v10.19.0 $ npm -v 7.18.1 続いて truffle を…

簡単なブロックチェーンをつくる(その10 ブロックチェーンの検証)

最後にブロックチェーンの検証のコードを加えて,一応の完成とする.verify_blockchain関数は各ブロックのハッシュ値を再計算し,ブロックに記録されいているものと一致するか調べる.この関数はsync関数のなかでブロックチェーンをコピーするときに使ってい…

簡単なブロックチェーンをつくる(その9 ノードの同期)

各ノードのブロックチェーンは /block により別々にブロックが生成される.そこで同期をとる時点で一番長いブロックをもつブロックチェーンを「真の」ブロックチェーンをみなすことにする.その他のノードのブロックチェーンは一番長いブロックチェーンに置…

簡単なブロックチェーンをつくる(その8 複数ノード)

ブロックチェーンを複数のノードでつくらせる.各ノードの名前は localhost:5000, localhost:5001 などのようにドメイン名とポート番号にする. # ノードの所有者 node_owner = sys.argv[2] print("node owner=", node_owner) @app.route('/nodes/add', meth…

簡単なブロックチェーンをつくる(その7 マイニング)

ジェネシスブロック以外のすべてのブロックもマイニングによって生成する.どのブロックにもトランザクションリストの先頭にコインベーストランザクションをつくる.コインの送り先はとりあえずジェネシスブロックと同様にSatoとするが,あとで複数ノードに…

簡単なブロックチェーンをつくる(その6 ジェネシスブロックのマイニング)

前回のプログラムを使ってジェネシスブロックのマイニングを行う.ジェネシスブロックはブロックチェーンのインスタンス生成時にコンストラクタを通じて作成する.ジェネシスブロックに入れるトランザクションは,コインベーストランザクション(プルーフオ…

簡単なブロックチェーンをつくる(その5 プルーフオブワーク)

新しいブロックを生成するための条件として,ブロックのハッシュ値に条件を設ける.何度もブロックのハッシュを計算させ,ハッシュ値がある条件を満たした場合に限りブロックを生成する.今回はこの原型をつくる. ブロックのハッシュ値は sha256 を使ってい…

簡単なブロックチェーンをつくる(その4 ブロックチェーンのクラス化)

ブロックチェーンのクラスをつくって前回のプログラムを少し整理する. import hashlib, json from time import time from flask import Flask, jsonify, request app = Flask(__name__) class Blockchain(): def __init__(self): # ブロックチェーン本体 se…

簡単なブロックチェーンをつくる(その3 ブロックのハッシュ)

次にブロックのハッシュを計算する.ブロックチェーンの各ブロックは,その直前のブロックのハッシュ値を保存している.ジェネシスブロックは例外で,「直前の」ブロックは存在しない.そのため直前のブロックのハッシュ値は適当に決めることになる. ハッシ…

簡単なブロックチェーンをつくる(その2 ブロック)

前回はトランザクションをつくった.今回はブロックの骨格をつくる.ブロックの構造もトランザクションと同様に辞書を使って block = { 'index': ブロック高(ジェネシスブロックを0とする) 'tiemstamp': ブロック作成日時 'tx_list': トランザクションリス…