光の屈折と反射のときの振動数

 光が屈折や反射をしても振動数は変わらない.これは高校物理では理由なく書かれていることらしい.そのせいかネットにはなぜ振動数が変わらないのか?という質問を見かける.誰が考えても当たり前のことであればこういう質問は出てこないと思うので,やはりこれは自明ではないことなのだろう.

 その解答について,光の振動数は光源だけで決まるもので,屈折や反射では変わらないから,とするのは違和感がある.実際,非線形物質に光が入射すると振動数が変化することもある.高校や大学教養の物理では線形物質しか扱わないから光の振動数が変わらないと書けるのだと思う.具体的には電磁波が線形物質に入射したときの境界条件から,電磁波の振動数が変化しないことが導かれる.例えば 太田浩一氏の「電磁気学の基礎II」(シュプリンガー, 2007)P579 に式を使った証明がある.光は電磁波の一種なのですべてはマクスウェル方程式から導かれると思うかもしれないが,この問題は物質中の電磁波を扱うので該当物質の構成方程式も必要になり,まったく自明ではないことである.光の振動数が変化しないのは当たり前だ,と言う人がいたら実はよくわかっていないと疑ったほうがいいかもしれない.