グリフィス「電磁気学」邦訳

 グリフィスの電磁気学の日本語訳を(ようやく)買った.原書を先に買った身としては,こんな平易な英語も読めないのかと思われそうだが,正直に言って日本語では読める速度がまったく違う(もちろん理解の深さも).改めて読み返してみると,やはり優れた教科書であるように思う.以前読んだ太田浩一氏の「電磁気学の基礎I, II」よりも読みやすく,先にこちらを読んでいたほうがずいぶん楽であったろうと思う.

 惜しいのはところどころにおかしい訳が見つかることである.別に原書と比べながら読んでいるわけではないが,日本語がおかしいな,と思うところを原書に当たってみるとやっぱりおかしな訳になっていることが多い.例えば "a diverging P" (Pは分極密度) は,Pの発散が0でないこと  (\nabla\cdot\mathbf{P}\neq 0) なのだが,「Pが発散しているとき」と訳されているので,あたかもPが無限大になっているような意味になってしまっている.他にも, "a million km" を「数百km」と訳すのはいくらなんでもまずいだろうと思う(文字通りケタ違い!).また,アメリカの教科書であるせいかフィートやマイルが登場するので,できればその都度カッコ書きでメートル表記もつけてほしかった.