電磁気学の基礎 II (その6) 12.15, 12.16, 12.17

電磁気学の基礎 II」太田浩一 著 (シュプリンガージャパン) の読書メモ


 今回は疑問点が多く残る.


 12.15節.磁荷があるときは(12.20)によって磁場は磁位とベクトルポテンシャルで表されるが,ここでは磁位を使わずにすます方法を考えている.磁荷の存在を仮定しつつ,磁位の存在を否定する動機がよくわからない.磁場の発散が0になるということは磁荷密度がないということなので,磁荷はあるけど磁荷密度はない,ということになる.そういう特異な状況があるかどうかを考える.


 (12.83)の第2式は円柱座標を球座標に直している.


 直線電流  I のつくる磁場  B_\varphi は直線電流密度  I\delta(\rho)/\pi \rho によってつくられるので,


 \begin{align} \frac{\delta(\rho)}{\pi\rho}=\delta(x)\delta(y) \end{align}


の関係がある.すなわち  \pmb{\nabla}\times\mathbf{B}=\mu_0 I \delta(x)\delta(y)\mathbf{e}_z である.


 ストリングが物理的自由度でない,というのはどういうことだろうか.磁気モノポールを観測してもストリングは観測できないので,磁気モノポールの起源が磁荷密度なのか,それともディラックのひもなのかが区別できない,ということだろうか.


 12.16節.ここでも磁荷が登場するが,磁荷の存在を仮定したときの話題なのか,便宜的に磁気モーメントを磁荷に例えての話題なのか,だんだんわけがわからなくなってきた.ここではオーロラの話をしているのできっと後者なのであろう.ただし一方の極付近のみを考えているので磁気モーメントではなく,磁荷のつくる球対称な磁場を考える,ということだろうか.


 P378に点電荷 r_0 ではね返るようなことが書かれているが, r_0 は初期位置だと思うのだが? P377とは別の運動を考えているのだろうか.地球磁場に補足された荷電粒子が北極や南極付近で跳ね返される磁気鏡効果はよく知られているが,ここでの例は球対称な磁場なので現象としてはちょっと違う.


 12.17節.ここでも磁荷が登場する.電荷と磁気モノポール(磁荷)の双極子という特殊な状況をトムソン双極子というらしい.この系では電磁場が角運動量を持つ.この角運動量量子化すると,電荷と磁荷の積が量子化される.電荷自身が量子化されることは言えない(磁荷が量子化されるという問題に置き換わるだけ).