誰が磁場をつくったのか?(その3)

 グリフィスのテキストでは伝導電流も変位電流も磁場をつくるような書き方だが,太田浩一氏の「電磁気学の基礎I」では変位電流は磁場をつくらないことを強調している.微分型のマクスウェル方程式を見るかぎり,磁場をつくるのは電流密度だけである.積分型のマクスウェル方程式因果律があいまいであり,何が何をつくったのかがわかりにくい.もし本当に変位電流が磁場を「作る」のであれば,遠方につくる磁場は変位電流のある場所からの遅延があるはずであるが,積分型のマクスウェル方程式ではそれがみえない.定常電流がつくる磁場と同様な手法が使えるという意味で,変位電流のつくる磁場はある種の計算手法として考えるのが適切なのかもしれない.