電磁気学の基礎 I (その44) 11.4, 11.5, 11.5.1, 11.5.2, 11.6

電磁気学の基礎 I」太田浩一 著 (シュプリンガージャパン) の読書メモ


 11.4節.磁場中の電子の運動に伴う磁気モーメントは、磁場の変化に対する断熱不変量である.解析力学を知らないと断熱不変量を理解するのは難しい.P269の最初の式の右辺は  ea^2 \omega_0^2/2 である.


 11.5節.変位電流は磁場をつくらないとくり返し強調。電場や磁場をつくるのは電荷と電流だけである。


 11.5.1節.変位電流密度が時間によらない場合,磁場は(11.16)で計算できる.変位電流が球対称であれば積分によって磁場は0になる.球対称でなくても(11.20)によって磁場は0にある.準定常とは変位電流を無視できることだと思っていたが,ここの定義では  \ddot{\mathbf{B}} が無視できる場合らしい.変位電流の時間依存性が無視できない場合には(11.16)に依拠した議論はできない.詳しくは14章でやるらしい.


 11.5.2節.(11.23)の下の式は


 \begin{align}  \frac{\partial}{\partial t}\frac{1}{R}=\frac{\partial \mathbf{z}}{\partial t}\cdot\pmb{\nabla}_{\mathbf{z}}\frac{1}{R}  =\mathbf{v}\cdot \pmb{\nabla}_{\mathbf{z}}\frac{1}{R} = -\mathbf{v}\cdot\pmb{\nabla}\frac{1}{R} \end{align}


によるものと思われる.


 (11.26)式を得るには,まず  -\dot{\mathbf{A}} を求めて


 \begin{align}
  \mathbf{E}^{(2)} &= -\frac{\mu_{0} q}{8 \pi}
  \left(\frac{\dot{\mathbf{v}} \cdot \mathbf{R} \mathbf{R}}{R^{3}}+\frac{\dot{\mathbf{v}}}{R}\right)
  + \frac{\mu_{0} q}{8 \pi} (\mathbf{v}\cdot\pmb{\nabla})
  \left(\frac{\mathbf{v} \cdot \mathbf{R} \mathbf{R}}{R^{3}}+\frac{\mathbf{v}}{R}\right)
\end{align}


とする. \mathbf{R}微分を順次計算していくと


 \begin{align}
&\   (\mathbf{v}\cdot\pmb{\nabla})\frac{\mathbf{v}}{R}=-\frac{(\mathbf{v}\cdot\mathbf{R})\mathbf{v}}{R^3} \\\\
&\  (\mathbf{v}\cdot\mathbf{R})\mathbf{R}  (\mathbf{v}\cdot\pmb{\nabla})\frac{1}{R^3}
  =-\frac{3(\mathbf{v}\cdot\mathbf{R})^2 \mathbf{R} }{R^5}\\\\
&\   \frac{\mathbf{v}\cdot\mathbf{R}}{R^3}  (\mathbf{v}\cdot\pmb{\nabla}) \mathbf{R}
   =\frac{(\mathbf{v}\cdot\mathbf{R})\mathbf{v}}{R^3} \\\\
&\   \frac{ \mathbf{R}}{R^3}  (\mathbf{v}\cdot\pmb{\nabla})\mathbf{v}\cdot\mathbf{R}
   =\frac{v^2\mathbf{R}}{R^3} 
\end{align}


となるので,これらを使えば(11.26)を得る.


 11.6節.ファラデイ(この本ではファラデーではない)の法則をガリレイ変換する.磁場はガリレイ不変を仮定する.K′系の磁場  \mathbf{B}'(\mathbf{x}', t') の時間微分ラグランジュ微分になる.ファラデイの法則はガリレイ不変になるが,電場は(11.31)のように変換しなければならず,磁場とは異なる.