電磁気学の基礎 I (その45) 11.7, 11.8, 11.9

電磁気学の基礎 I」太田浩一 著 (シュプリンガージャパン) の読書メモ


 11.7節.閉曲面の側面を中から外へ出る磁束は,(9.32), (9.33)で求めた.


 \begin{align}  -\frac{d\Phi}{dt}\Delta t = -\Delta t \oint \mathbf{B}\cdot\mathbf{u}\times d\mathbf{x} \end{align}


である.(11.33)の最後の項は  dV \mathbf{n}\cdot\mathbf{u}\Delta t dS で表している.

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 P282真ん中あたり,変位電流を無視すると  \pmb{\nabla}\times\mathbf{B}=\mu_0 \mathbf{J} であるから   \pmb{\nabla}\times\mathbf{J}=- \frac{1}{\mu_0}\nabla^2 \mathbf{B} である.


 P283の最初の式の第3式は  \oint d\mathbf{x}\cdot d\mathbf{A}/dt である.


 11.8節.電磁場をガリレイ変換で考えると矛盾が生じる. u^2/c^2 のオーダーでは正しそうに見えるが,ビオー・サヴァールの法則を落としてしまう.


 11.9節.微分演算子の変換式は


 \begin{align}
  \pmb{\nabla}&=\frac{\partial }{\partial \mathbf{x}'}\frac{\partial \mathbf{x}'}{\partial \mathbf{x}}+\frac{\partial }{\partial t'}\frac{\partial t'}{\partial \mathbf{x}}
  = \frac{\partial }{\partial \mathbf{x}'} =\pmb{\nabla}' \\\\
  \frac{\partial }{\partial t} &=\frac{\partial }{\partial \mathbf{x}'}\frac{\partial \mathbf{x}'}{\partial t}+\frac{\partial }{\partial t'}\frac{\partial t'}{\partial t}
  =\frac{\partial }{\partial t'}-\mathbf{u}\cdot\pmb{\nabla}' 
\end{align}


によって得られる.


 P289の真ん中あたりに(11.9)は,とあるが,(11.9)は無関係である.


 うまくいくはずがないガリレイ変換をかなり詳しく扱っているが,歴史的な意味以外に役に立つことがあるのだろうか.





 Iが終わった.他の電磁気の本では素通りしてしまうところや,他の本では扱われていない話題,一般的な証明など,この本を読んでよかったと思えるところが何度もあった.このブログでは行間の計算をはじめとして,理解できなかったところや誤植などを主に指摘していたため,どうしても批判的な内容になりがちだったが,実際にはその逆の印象である.これで正誤表や補足など,アフターケアがあったら,と思う.


 ほとんど触れなかったがこの本の特色の一つは歴史に詳しいことである.歴史についての知識はほとんどなかったので,興味深く読ませてもらった.


 ゲージ変換と境界条件の関係や,熱力学的関係式など,よく理解していない点も残っており,まだまだ読了とは言い難い状態である.ただ読み直すのは少し時間をおいてからにしたい.