量子力学の,時間によらない摂動論は演算子のままで計算すると比較的楽に展開できる。
非摂動部分のシュレーディンガー方程式を
とし, はわかっているとする.また縮退はまったくないとする.摂動項が加わった場合を
とする. で になる.直交条件として
を課す.\eqref{2}に左から をかけると
になる.これを使いつつ,\eqref{1}式を次のように変形する.
あるいは\eqref{2}式を次のように変形する.
まず \eqref{5a}の両辺に左から をかける.
となるが,この式は で にならない.この種の方程式 では, としても解になる.このことから,\eqref{6}ではなく
とすることができる.
次に \eqref{5b}の両辺に左から をかける.
\eqref{7a}と\eqref{7b}は似ているが少し違う.並べてみると
である.どちらも右辺で とすれば左辺の は を与える.右辺で とすれば左辺の は を与える.以下同様にして摂動展開できる.\eqref{7a}をレイリー-シュレーディンガーの摂動展開,\eqref{7b}をブリルアン-ウィグナーの摂動展開という.量子力学の入門書に載っているのはレイリー-シュレーディンガーである.\eqref{7a}は右辺に が2か所あるので,展開が高次になると複雑になる.\eqref{7b}は右辺に が1か所しかなく,高次項も単純であるが,\eqref{7b}に現れている が未知である。
エネルギーを求めるには \eqref{4} を使う.右辺の に 次の摂動 を入れれば がわかる.ブリルアン-ウィグナーの場合, の分母に現れる を の意味とみなせば,\eqref{4}式が を決める方程式になる.つまりレイリー-シュレーディンガーのように「逐次」求めるのではなく,ブリルアン-ウィグナーの摂動エネルギーは方程式を(セルフコンシステントな方法で)解いて求めなければならない.その意味で,ブリルアン-ウィグナーはレイリー-シュレーディンガーの摂動項の一部を無限回足しあげているものと考えられる.