ラゲール多項式(その1)

 ラゲール多項式は水素原子波動関数にでてくる(正確にはラゲール陪多項式).それ以外に使いみちがあるかと言われるとあまり思いつかないが,調和振動子でも球座標で解けば必要になりそうである.ラゲール多項式の定義は本によって異なる.例えば J. J. サクライ「現代の量子力学(上)」第2版, 吉岡書店 (2014)では


 \begin{align} L_n(r) = e^r \frac{d^n}{dr^n} (r^n e^{-r}) \tag{1} \label{1}\end{align}


と定義されている.一方,D.J. Griffiths and D.F. Schroeter, "Introduction to Quantum Mechanics" 3rd ed., Cambridge (2018) では


 \begin{align} L_n(r) = \frac{e^r}{n!} \frac{d^n}{dr^n} (r^n e^{-r}) \tag{2} \label{2}\end{align}


である.Griffiths-Schroeterの脚注には,\eqref{1}は古い定義と書いてある.


 ラゲール陪多項式も定義が本によって異なる.やはり J. J. サクライ では


 \begin{align} L_n^m(r) = \frac{d^m}{dr^m}L_n(r) \tag{3} \label{3} \end{align}


であり,Griffiths-Schroeterでは


 \begin{align} L_n^m(r) = (-1)^m\frac{d^m}{dr^m}L_{n+m}(r) \tag{4} \label{4} \end{align}



である.\eqref{3}と\eqref{4}の関係は


 \begin{align} L_n^m(r) = (-1)^m L_{n+m}^m(r) \end{align}


である(左辺が\eqref{4}の定義).Wikipedia 日本語版では\eqref{3}が,英語版では\eqref{4}が載っている.困ったことに,本によってはどちらの定義なのか明示されないままに使われていることがある.一つの見分けかたは,水素原子波動関数の表式で  L_{n+l}^{2l+1} となっていたら\eqref{3}が, L_{n-l-1}^{2l+1} となっていたら\eqref{4}が使われている.