コンドン-ショートレー位相

 以前の量子力学の本では,球面調和関数の定義は次のように書かれていた。


 \begin{align}
Y^m_{l}(\theta, \phi) = (-1)^m \sqrt{ \frac{2l+1}{4\pi}\frac{(l-m)!}{(l+m)!}} P^m_l(\cos\theta)e^{im\phi}
\end{align}


最近の本では次のような定義になっているものが増えてきている.


 \begin{align}
Y^m_{l}(\theta, \phi) =  \sqrt{ \frac{2l+1}{4\pi}\frac{(l-m)!}{(l+m)!}} P^m_l(\cos\theta)e^{im\phi}
\end{align}


いずれも  m\geq 0 の場合である.両者の違いはコンドン-ショートレー位相と呼ばれる  (-1)^m の有無である.実は,最近の定義はこの位相が無くなったわけではなく,ルジャンドル多項式  P^m_l(\cos\theta) の定義に位相が含まれるようになっている.すなわち   (-1)^m P^m_l(\cos\theta) を新しいルジャンドル多項式の定義としている.例えば,D.J. Griffiths, "Introduction to Quantum Mechanics" 2nd ed. (Pearson 2005) では古い定義を使っているが,2018年の第3版では新しい定義に変わっている.またアルフケン-ウェーバーの物理数学の本でも,日本語版がある第4版(1996年,日本語版は2001年)では古い定義だが,2012年の第7版では新しい定義になっている.さらに英語版 WikipediaMathematica も新しい定義が使われている.はっきりした理由はわからないが,"AMS-55"として知られる,M. Abramowitz and I. A. Stegun eds., "Handbook of Mathematical Functions with Formulas, Graphs, and Mathematical Tables" (National Bureau of Standards 1972) の定義に合わせたのかもしれない.