前回は各座標軸を回転軸とする回転を考えたが,今回は空間内の任意の回転を表すオイラー角を扱う.まず受動的回転,すなわち物体を固定して座標系(座標軸)を回転させる場合を考える.
1. 座標系を 軸のまわりに角度 回転させる.これにより 軸は 軸に移る.
2. 座標系を 軸のまわりに角度 回転させる.これにより 軸は 軸に移る.
3. 座標系を 軸のまわりに角度 回転させる.これにより 軸は 軸に移る.
これらを式で表せば,空間の回転行列 で定義した行列
を使って
になる.ここで などとした. の は受動的回転を表す. は能動的回転として定義されているので などと引数に負号がついている(これで座標軸が正方向に回転する).2番目の が ではなく であるのは, によって座標系が 系に移っており,その座標系に対する回転であるためである. も同じ.
や を,回転前の座標軸のまわりの回転 で表したい場合もある(例えば量子力学の回転演算子).これは以下のように行う.図のように,ベクトル のまわりの角度 の回転は, とベクトル自身を(別の回転軸により)回転させてから のまわりに角度 回転させ,最後に とベクトル自身を回転させることで実現できる.このことから, は,まず 軸のまわりに角度 だけ回転して 軸を 軸に一致させ, 軸のまわりに角度 だけ回転してから,再び 軸のまわりに角度 だけ回転させることで得られる.
も同じ方法により, 軸のまわりに角度 回転させて としてから 軸のまわりに角度 回転させ,再び 軸のまわりに角度 回転させて とする.
\eqref{2}, \eqref{3}を\eqref{1}を代入すると
になる.回転の順序は であるが,回転行列を作用させる順序が逆になる.
上のオイラー角は の順で回転したが, の順で回転してもよい.この場合もオイラー角と呼ばれ,主に力学で使われる. のオイラー角は主に量子力学で使われる.理由はウィグナーの 関数と呼ばれる関数が実数関数になるからである.