電磁気学の基礎 I (その38) 9.5, 9.6, 9.7, 9.8, 9.9

電磁気学の基礎 I」太田浩一 著 (シュプリンガージャパン) の読書メモ


 9.5節. \mathbf{v}_\perp の特殊解として  d\mathbf{v}_\perp/dt=0 となる定数解としたものが(9.22)である.P214の力学的エネルギーの中で電荷 q であるが,ここでは電子を考えているので  q=-e である.


 9.6節.慣性系での物体の速度  \mathbf{v} と回転座標系(角速度  \pmb{\omega} )での速度  \mathbf{v}' \mathbf{v}=\mathbf{v}'+\pmb{\omega}\times\mathbf{z} の関係がある.角速度が一定であれば加速度は  \mathbf{a}=\mathbf{a}'+2\pmb{\omega}\times\mathbf{v}'+\pmb{\omega}\times(\pmb{\omega}\times\mathbf{z}) である.


 9.7節.P218の一番上の式ではデルタ関数項を落としているが,落とす理由がわからない.この式は磁気モーメントの向きを  z 軸方向に取っているので


 \begin{align} B_z = \frac{\mu_0 m}{4\pi}\left(\frac{3z^2}{r^5}-\frac{1}{r^3}\right)+\frac{2\mu_0 m}{3\pi\rho}\delta(\rho)\delta(z)  \end{align}


になるはずである.デルタ関数の円柱座標表示は


 \begin{align} \delta(\mathbf{x})=\frac{\delta(\rho)\delta(z)}{\pi\rho} \end{align}


を使った.これは前に出てきたように, \int_0^\infty d\rho \delta(\rho)=1/2 に基づいている.まずはデルタ関数項を落として計算してみると,磁束は(9.28)となり,(9.27)から  B_\rho を求めると


 \begin{align} B_\rho = \frac{3\mu_0 m \rho z}{4\pi r^5} \end{align}


となって(8.11)を再現する.一方,デルタ関数項による磁束は


 \begin{align} \frac{2\mu_0 m}{3}\delta(z) \end{align}


になる.これを  z微分しても0にならないので(8.11)を再現しない.つまりデルタ関数項を入れてはいけないということになるが,この項も軸対称である.どこがおかしいのだろうか.


 9.8節.(9.32)は流体力学に似たような式があったと思うのだが思い出せない.


 9.9節.ローレンツ力は仕事をしない.これは簡単そうで難しい.グリフィスに詳しく書かれているが,磁石で金属を引き寄せるときの仕事は磁場がするのではない.