電磁気学の基礎 II (その35) 17.6.1, 17.6.2

電磁気学の基礎 II」太田浩一 著 (シュプリンガージャパン) の読書メモ



 17.6.1節.(17.31)が解になっていることを確かめる.


\begin{align}
  -i\hbar \pmb{\nabla} e^{iqL/\hbar} =  e^{iqL/\hbar} q\pmb{\nabla} L=e^{iqL/\hbar} q\mathbf{A}(\mathbf{x})
\end{align}


により,


\begin{align}
  (-i\hbar \pmb{\nabla}-q\mathbf{A})\psi(\mathbf{x})&=(-i\hbar\pmb{\nabla} e^{iqL/\hbar}) \psi^{(0)}
  + e^{iqL/\hbar} (-i\hbar\pmb{\nabla}\psi^{(0)})-q\mathbf{A} e^{iqL/\hbar} \psi^{(0)} \\
  &= e^{iqL/\hbar} (-i\hbar\pmb{\nabla}\psi^{(0)})
\end{align}


となるので,(17.32)の下の式を得る.これをシュレーディンガー方程式に代入すれば全体を  e^{iqL/\hbar} で割れて,磁場のないシュレーディンガー方程式になる.


 (17.33)の変換によるシュレーディンガー方程式は


\begin{align}
  \frac{1}{2m}(-i\hbar\pmb{\nabla}-q\mathbf{A}')\psi' &= \frac{1}{2m}(-i\hbar\pmb{\nabla}-q\mathbf{A}-q\pmb{\nabla}\Lambda)^2
  e^{iq\Lambda(\mathbf{x})/\hbar}\psi(\mathbf{x}) \\
  &=  \frac{1}{2m} e^{iq\Lambda(\mathbf{x})/\hbar} (-i\hbar\pmb{\nabla}-q\mathbf{A})^2 \psi(\mathbf{x})
\end{align}


となるので,全体を  e^{iq\Lambda(\mathbf{x})/\hbar} で割ればもとのシュレーディンガー方程式に一致する.すなわち変換(17.33)のもとでシュレーディンガー方程式は不変である.


 時間にも依存する一般のゲージ変換


\begin{align}
  \phi' = \phi - \dot{\Lambda}, \quad
   \mathbf{A}' = \mathbf{A} + \pmb{\nabla}\Lambda,\quad
    \psi' = e^{iq\Lambda/\hbar}\psi
\end{align}


のもとでは,


\begin{align}
  L=\int (d\mathbf{x}\cdot\mathbf{A}-dt\phi)=\int dx_\mu A^\mu
\end{align}


とする.このとき


\begin{align}
 L' &= \int (d\mathbf{x}'\cdot\mathbf{A}'(\mathbf{x}')-dt'\phi') \\
  &= L + \int( d\mathbf{x}'\cdot\pmb{\nabla}'\Lambda(\mathbf{x}')+dt'\dot{\Lambda}) \\
  &= L+\int d\Lambda =  L + \Lambda
\end{align}


と変換する.シュレーディンガー方程式の変換性は


\begin{align}
  q\phi'\psi' = q(\phi-\dot{\Lambda})e^{iq\Lambda/\hbar}\psi
\end{align}


\begin{align}
  i\hbar \frac{\partial \psi'}{\partial t}= -q\dot{\Lambda}e^{iq\Lambda/\hbar}\psi+
  e^{iq\Lambda/\hbar}\frac{\partial \psi}{\partial t}
\end{align}


となり, \dot{\Lambda} 項は相殺して消える.全体を  e^{iq\Lambda/\hbar} で割れば元の時間依存シュレーディンガー方程式が得られるので, シュレーディンガー方程式はゲージ変換のもとで不変である.


 ミニマルな置き換えはゲージ不変性よりも強い要請である.とすると,必ずしもミニマルな置き換えでなくてもよいということだろうか?逆に,ミニマルな置き換えでなければならない数学的な要請があるのだろうか.


 17.6.2節.量子論では電磁場のほか位相因子  P=e^{i(q/\hbar)\Phi} も自由度の一つである.局所的でない量が物理的自由度であっても因果関係は壊れないのだろうか.


 ソレノイドのまわりではアハロノフ-ボーム効果が観測されるのに,ディラックストリングの場合も超伝導の磁束の量子化も,波動関数の一価性を要請することで位相が量子化され,アハロノフ-ボーム効果の干渉が観測できなくなる.としたら,ソレノイドによるアハロノフ-ボーム効果はなぜ観測されるだろうか? ソレノイドを入れることで積分領域が単連結でなくなり,波動関数の一価性が破れることでアハロノフ-ボーム効果が現れる,と思っていたがそれは間違いということになる.スピンの2価表現のように波動関数の多価性を許す場合もあれば,磁束の量子化のように波動関数の一価性を要請する場合もあり,どういう場合にどういう規準があるのか,残念ながら手元にある量子力学の本には何も書かれていない.(それとも私が初歩的な勘違いをしているだけ?)