電磁気学の基礎 I (その39) 9.10, 9.10.1, 9.10.2, 9.11.1, 9.11.2

電磁気学の基礎 I」太田浩一 著 (シュプリンガージャパン) の読書メモ


 9.10節. (9.39)あたりで,もやもやが残っていた(8.52)を具体的に示しており,少しすっきりした.後半の,磁場のエネルギーの局在のところでは状況設定が理解できない.ソレノイドの断面とはどの方向に切った断面だろうか.線要素  l を垂直方向に押し出しているが,線要素を押し出した軌跡は面であるから,それによって体積は増加しないのではないだろうか.いずれも図がないので何が起きているのか想像できない.下のほうに体積  ldn とあるので, dn は面積かと思えたが,そうすると線要素を  dn だけ押し出す,の意味がわからない.単位長さあたりの力を考えていることから,もしかしたらすべての量を単位長さあたりにしているのかもしれないが,よくわからない.


 9.10.1節.前半は明快で式変形もよくわかる.同心ソレノイドの結合定数  k の定義がおかしい. L_{11} L_{22} \geq L_{12} L_{21} なので  0\leq k\leq 1 にはならない.他の本を調べたところ,別の本にも同じ間違いをしていることがわかった(あえてその本の名は書かないが).どうやら  k L_{11} L_{22}=L_{12} L_{21} が正しい結合定数の定義らしい.そうすると  k=S_1/S_2 であり,


 \begin{align}
   U &= \frac{1}{2\mu_0}(B_1+B_2)^2 S_1 + \frac{1}{2\mu_0}B_2^2 (S_2-S_1) \\
   &= \frac{\mu_0}{2}(n_1^2 I_1^2 S_1 + 2n_1 n_2 I_2 I_2 S_1 + n_2^2 I_2^2 S_2) \\
   &= \frac{1}{2} (L_{11} I_1^2 + L_{22} I_2^2 + 2L_{12} I_1 I_2)
\end{align}


になる.


 9.10.2節.計算は4.5節のP91でしたものと同じ.球面の磁位を求めるには同様の計算を電位に対して行っていることを利用する.球面に  \sigma=P\cos\theta の面密度をもつ電荷分布に対して,P91より電位は  \phi=E_0 a \cos\theta であり,  E_0 は(4.10)によって  p と関係している.これから  \phi=p\cos\theta/4\pi\epsilon_0 a^2 になる.対応する磁位は  p/\epsilon_0 \to \mu_0 m と置き換えればよい.


 9.11.1節.電気力線と同様に磁力線にも張力や圧力がある.ここでの張力,圧力の向きは図4.8とは逆である.主語の違いと思われる.


 9.11.2節.電流がつくる静磁場によって電流自身に加わる力(自己力)はない.