電磁気学の基礎 I (その30) 7.7.1, 7.7.2, 7.7.3

電磁気学の基礎 I」太田浩一 著 (シュプリンガージャパン) の読書メモ


 7.7.1節.「有理化電流要素」によって,電流要素のつくる磁場をビオー・サヴァールの法則で計算したものが正当化される.7.2節で言及されていた作用反作用の法則はどうなるのだろうか.


 直線電流のつくる磁場は積分(2.9)を,ベクトルポテンシャルは(3.13)を使えば得られる.半無限,無限長の電流の場合も2.3.1節で計算した方法で得られる.無限遠の電流は磁場に効かないので,無限長の直線電流は無限遠でループををつくっているとみなせる.


 7.7.2節.円柱対称の磁場も2.3.2節で使った積分を使えば得られる.直線電流密度が  (I/\pi\rho)\delta(\rho) で与えられることは,P60で線電荷密度が同様な形で与えられたのと同様である.円筒電流密度に対する磁場は(2.16)からもわかるように


 \begin{align} B_\varphi(\rho)=\frac{\mu_0 K a}{\rho}\theta(\rho-a) \end{align}


である.本では階段関数の引数が誤っている.その下のほうにある,「直線電流  \pi a^2\varrho がつくる磁場」も  \pi a^2 J の誤り.ベクトルポテンシャルの計算も3.2.2節の計算と同じ.P161の3番目の式が  \phi(\rho) になっているが, A_z(\rho) の誤り.


 7.7.3節.(7.34)の計算は(3.23)と同じ.直線電流の重ね合わせでベクトルポテンシャルを計算するには,(7.31)から得られる


 \begin{align}A_\varphi= -\int d\rho B_\varphi(\rho) = \frac{\mu_0 I}{2\pi}\ln\frac{1}{\rho} \end{align}


を使う. (0, y',0) を通る  x 軸に平行な直線電流  Kdy' が観測点  (0,0,z) につくるベクトルポテンシャル


 \begin{align} A_x(z)=\frac{\mu_0 K}{2\pi} \int_{-l/2}^{l/2} dy' \ln \frac{1}{\sqrt{y'^2+z^2}}\end{align}


になる.ここで積分にカットオフを入れた.P162の不定積分の式を使うとその下の  A_x(z) の式を得る. l \gg z であるから第1項目は  z=0 としてよい. \arctan (l/2z) \sim \pi|z|/2z を使うとその下の  A_x(z) の式を得る.これは定数項を除いて(7.34)に等しい.


 なんだか誤植が増えてきた.