ゲージ場の経路積分量子化で使われるファデエフ-ポポフの方法は一体何をやっているのかを,簡単な積分で考えてみる.
この積分は発散している.そこで次の変数変換を行う.
発散は 積分から生ずる.このように収束する積分と発散する積分を(物理的な意味づけのもとに)分離する方法がファデエフ-ポポフの方法である.
は次のような変換(''ゲージ変換'')で不変である。
は定数である。これは被積分関数が
のみの関数であるためである.この式を一種のゲージ変換とみなすと,
を変えたときに
が移動する軌跡はゲージ軌跡と呼ばれ、どの
も
と同等の寄与を
に与える。発散は
の自由度(ゲージ変換の自由度)の積分から生ずる.そこで,
をいったん固定(ゲージ固定)して積分し,その後あらためて
に関して積分することを考える.このためには例えば恒等式
を に挿入する。
変数変換すると
となる。最後の表式の被積分関数は によらない.これは
に固定しておき,その後
の積分を行っていることに相当する.これにより無限大の
積分を分離できたことになる。
この例は となるようにいったん
を固定して積分したが,今度は
の条件のもとに積分することを考える。
ここで は
積分の規格化因子である.
\eqref{1} において と変数変換すると
さらに と変数変換すると
これと\eqref{1}を比べると
となり、 はゲージ変換のもとで不変であることがわかる。
\eqref{1}を に挿入して
はゲージ不変であるから、変数変換によって
とできる。すなわち被積分関数は によらず,
積分は収束する.
はファデエフ-ポポフ行列式と呼ばれる。
参考:R. Casalbuoni, Introduction to Quantum Field Theory 2nd ed., Wold Scientific (2017)