ベクトル面積(vector area)という量がある.英語版Wikipediaによると,面積分によって
と定義される. は面上の単位法線ベクトル.日本語Wikipediaは現時点では存在しない.
閉曲面のベクトル面積は曲面の形状によらずゼロになる.
証明は発散定理を使う.
が定数ベクトルの場合,左辺は0になるので
により\eqref{2}を得る.
閉曲面を2つの開いた曲面に分割すると,この2つの曲面は面の縁を共有する.
の単位法線ベクトルの向きをひっくり返しての単位法線ベクトルと同じ向きにすると,
となる.すなわち面の縁が同じで,面の「向き」も同じあれば曲面の形状に関係なく,ベクトル面積は同一の値になる.
次に,開いた曲面の縁の部分である閉曲線を とすると, 上の線積分について
である.下図のように, は原点を頂点とし,底辺を とする微小三角形の面積である.
これを上で線積分すれば,円錐ような形の側面部分のベクトル面積が得られ,これはと縁を共有するからのベクトル面積に等しい.すなわち \eqref{3} を得る.
さらに,定数ベクトル に対して
が成り立つ.証明はストークスの定理を使う.
として定数ベクトル とスカラー関数 の積 とおく.
これからストークスの定理は
となるが,左辺はスカラー三重積なので
となり,定数 を積分から外して
が成り立つ.ここで として とすると
なので
により\eqref{4}を得る.