輻射の反作用(放射の反作用)事前加速問題(メモ)

 加速運動する荷電粒子が電磁波を放射するとエネルギーを失う.荷電粒子はエネルギーを失うことで運動が変化する.このときに荷電粒子が受ける力が輻射の反作用と呼ばれるもので,この力を含む運動方程式ローレンツ-アブラハムの式(アブラハム-ローレンツの式)と呼ばれている.この力が作用していてさらに外力がある場合には,運動方程式の解として外力を加える前に荷電粒子が外力を感じてしまうという「事前加速問題」があることが知られている.


 ローレンツ-アブラハムの式は非相対論的極限で成り立つ式であり,これを相対論的領域でも適用できるようにしたものがローレンツ-アブラハム-ディラックの式(LAD方程式)である.LAD方程式でも事前加速問題は存在する.この事前加速問題の解決策は F. Rohrlich が次のレビューで紹介している.


F. Rohrlich, "The dynamics of a charged sphere and the electron", Am. J. Phys. 65, 1051 (1997)


LAD方程式を導出する際の,時間についての展開に問題があり,これを注意深く行えば事前加速となる解は出てこない.詳細は以下の本に掲載されている.


Arthur D. Yaghjian, "Relativistic Dynamics of a Charged Sphere", 2nd ed., Springer (2006)