電磁気学の基礎 I (その21) 4.6, 4.7

電磁気学の基礎 I」太田浩一 著 (シュプリンガージャパン) の読書メモ


 4.6節. \langle\phi\rangle は4.4.1節のものと同じ定義.右辺の面積分は(3.6)で計算した.


 \begin{align}
  \langle\phi\rangle &=\frac{1}{4\pi\epsilon_0}\int dV' \varrho(\mathbf{x}')\frac{\theta(r'-a)}{r'} 
  + \frac{1}{4\pi\epsilon_0 a}\int dV' \varrho(\mathbf{x}') \theta(a-r') \\\
  &= \frac{1}{4\pi\epsilon_0}\int dV' \varrho(\mathbf{x}')\frac{\theta(r'-a)}{r'} +
  \frac{q_{\textrm{in}}}{4\pi\epsilon_0 a}
\end{align}


球内に電荷がなければ階段関数を  \theta(r') にできるので,ガウス平均値定理の式になる.


 4.7節.最初からつまづく. -q が電場  E/2 をつくり, q がその電場から受ける力は  qE/2 であるはずだが,(4.47)には負号がついている.この負号の意味がわからない.しかたがないので自分で設定を決める. z=0 -q の極板, z=l q の極板をおく.電場は  E=-\sigma/\epsilon_0 = -q/\epsilon_0 S になる.電場が負なのは  -z 軸方向(下向き)であることを意味する. -q が電場  E/2 をつくるので, q が電場から受ける力は


 \begin{align} F=q\cdot\frac{1}{2}E=-\frac{1}{2}\epsilon_0 E^2 S \end{align}


である. q の極板には下向きの力がかかる.この極板に外力を与えて上向きに  dl だけ変化させる.このときに必要な仕事は


 \begin{align} W=-F dl =\frac{1}{2}\epsilon_0 E^2 Sdl \end{align}


である.以下本文と同じ.


 電池をつないだ場合も上の設定で考える. E<0 であるから, -q の極板の位置を  \phi(0)=0 とすると, q の極板の電位は  \phi=-E l である. \phi 一定として微分すると  dE=\phi dl/l^2 であるので,極板が  dl だけ上に移動することで電荷 dq=-\epsilon_0 \phi S dl/l^2 だけ増加する.つまり電荷は減少する.これからP101と同じ  W^{\mathrm elect} を得る.この式の説明もわかりにくいが,負なので電池に仕事をしていることになるのだろう.外力による仕事で電場のエネルギーが増えるが,その2倍のエネルギーを電池に与えているので,トータルの電場のエネルギーは外力の仕事分だけ減る,というのが(4.48)の意味だろうか.


 以下は J. Vanderlinde, "Classical Electromagnetic Theory" 2nd ed., (Kluwer 2004) による説明.電池をつないでいない場合,電荷は一定であり,力  F によって導体が  d\xi だけ動くと,その力がした仕事は  Fd\xi である.系はこの仕事の分のエネルギーを失う.


 \begin{align}  Fd\xi=-dU, \qquad F=-\frac{dU}{d\xi}\bigg|_q\end{align}


一方,電池をつないで電位を一定にした場合, F d\xi の仕事をしたことで  dU のエネルギーを失うが,電池から電荷が供給され, W^{\rm elect} の仕事が系になされる.


 \begin{align} Fd\xi = -dU+W^{\rm elect} \end{align}


ここで  W^{\rm elect} = \phi dq であり, U=(1/2)q\phi より  dU=(1/2)\phi dq になるので


 \begin{align} Fd\xi=(1/2)\phi dq = +dU, \qquad F=+\frac{dU}{d\xi}\bigg|_\phi \end{align}


になる.