「電磁気学の基礎 I」太田浩一 著 (シュプリンガージャパン) の読書メモ
4.2節の続き.鏡像法の第2の例は点電荷と接地した半径 の導体球がつくる電位である.アポロニオスの定理が言及されているが,この定理を知らなくても大丈夫である.(4.3)式を変形すると
となり, は を中心とする半径 の球面を表すことがわかる.球の中心を座標原点に取って の位置に電荷 を置けば電位は(4.4)になる.ここで
である.電場は電位(4.4)の微分によって得られる.球面上の全電荷を求めるにはクーロンの定理を使う.表面電荷密度が で与えられるので,これを全表面で積分すると
となる.最初の等式で積分変数を に変えた.外側の球面では第2項がきくので, になる.
次の例は導体球を接地しない場合である.このとき球面の電位が一定で,導体表面の全電荷は0でなければならない.発見的な方法であるが,そうするためには原点に電荷 を置けばよいことがわかる.導体球内部の全電荷は0であるから球面上に誘起される全電荷も0になるだろうと想像がつくが,上と同様に電場を求め,球面上の全電荷を実際に計算してみると
となってたしかに0になっている.ここで,
を使った.
最後の例は が定数である楕円体の導体がつくる電位である.これは3.2.2節で計算した,線分電荷がつくる電位(3.12)を変形していくと得られる.
が一定のときこれは一定になる. したがって楕円体の導体の境界条件を満たしているので, この式は楕円体の周囲の電位を与えている.
楕円体の長軸を ,短軸を とする.楕円体の性質より を満たす.また楕円体上の任意の位置で を満たしている.ここで
である.長軸の先端 での電場は 軸方向,短軸の先端 での電場は動径 方向を向いている.短軸に沿った電場は
となるので,短軸の先端の電荷面密度は
である.同様に長軸に沿った電場は
となるので,長軸の先端の電荷面密度は
となる.