最近出た本2冊

 書店や図書館で最近見た本の第一印象.まじめには読んでいない.


「時空の大域的構造」
著者 スティーヴン・W・ホーキング,ジョージ・F・R・エリス
訳者 富岡竜太,鵜沼豊,クストディオ・D・ヤンカルロス・J
プレアデス出版 2019

 原著は70年代に出版された有名な本.評判も高く,邦訳されたことは意義深いと思うのだが,最近の本としては字や図版が非常に小さい.ページ数を減らして定価を下げるためかもしれないが,かなり読みづらくなってしまっていて残念である.Kindleなどの電子書籍版が出たらそちらのほうが良いかもしれない.敢えて批判めいたことを書くと,この本を読めるような人が日本語版を必要としているだろうか.むしろ,原著が出てから半世紀近く経ち,すでに多くの専門家が読んでいる筈なので,この本の注釈本を出してくれたほうが役に立ちそうな気がする.amazonの書評にもあるように,この本は非専門家には難しい.式変形の詳細や,行間の説明などを盛り込んだ本が出たら是非買いたい.

          • -

「原理と直観で読み解く 量子系の物理 -素粒子から宇宙まで-」第2版
著者 Bogdan Povh, Mitja Rosina
訳者 石川隆,園田英徳
森北出版 2019

 目次を見ると非常に多岐に渡る内容を扱っているが,本文は200ページ余りである.序文にも書いてあるが,多くの式は結果しか与えられていない.「概算」を重視したとあるが,概算のしかたは載っていないし,これらの式をまじめに導出しようとすると,とても「封筒の裏」だけでは足りない.とりあえず結果だけを見て概観をつかむための本,と言えるのかもしれないが,それならば詳しい導出はどの本のどのページを見ればよい,などの丁寧な誘導があると良いのではないだろうか.参考文献だけ挙げておくのは不親切であるし,当然ながらそれらはすべて洋書である.欲を言えば著者がWEB上に詳しい導出をPDFなどで上げておいてほしい.どうやって結果の式が得られたのかわからずに読み進めても消化不良感は否めない.