放射性紳士淑女

 「放射性紳士淑女諸君」とはニュートリノの存在を提案したパウリの書簡の書き出しである.原文はドイツ語で,その英訳とともにここに公開されている.日本語訳もたくさんあると思うのだが,調べてみたところ次の本しか見つからなかった.


ヴォルフガング・パウリ, 藤田純一(訳)「物理と認識」講談社(1975)


近くの図書館にもこの本はなく,これに書かれていることを知ったのは 朝永振一郎「スピンはめぐる」の脚注に書いてあったからである.それで別の本を探していたところ


長島順清「ニュートリノの謎」サイエンス社(1982)


に,「物理と認識」の訳文が全文引用されていた.パウリはニュートリノを導入する提案を "desperate remedy" と表現した.日本語では「絶望的な口実」と訳されていたが,「苦肉の策」か,あるいは格調高く「窮余の一策」のほうがしっくりくる.